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まっくら闇のお散歩ガイド|健康本04

今回は心も身体も健康になれそうな「散歩」をテーマにした本を選んでみました!

普通に飽きちゃったケアラ読者さまに向けて、散歩は散歩でも「特殊散歩」をご紹介したいと思います。

「ナイトハイカー」という存在をご存知でしょうか?「UMA」や「SCP」といった類の存在ではございません。
「ナイトハイカー=夜の山を歩く人」のことを指します。

今回はそんなナイトハイカーであり「体験作家」を名乗る文筆家・中野純氏の「闇を歩く」という本をご紹介します。

▲「闇を歩く」 (知恵の森文庫/光文社)の文庫版の表紙です。

「インターネットの闇」、「現代の闇」、「心の闇」、「闇バイト」、「闇堕ち」、「やみにかくれて生きるおれたちゃ妖怪人間なのさ」(妖怪人間ベムより)などなど、現代はどこもかしこも「闇まみれ」。

とかくネガティブに使われがちな「闇」ですが、今回はあくまでポジティブな関係を求めて闇を取扱いたいと思いますので、安心してコラムを読んでみてくださいね。

江戸時代に一世を風靡した「お伊勢参り」を例に出すまでもなく、テレビでは「ちい散歩」(テレビ朝日)が人気を博し、「モヤモヤさまぁ~ず」(テレビ東京)でも「街ぶら」という散歩スタイルが定番となっています。

「散歩」は時代とともに変化していくものなのですが、最新かつプリミティブな散歩スタイルが「闇を歩く」です!

例えば、電気のなかった縄文時代にはいまより深い闇がすぐ身近にあって、夜になるとまっくら闇だったことと思います。

そして、闇は畏怖の対象となって、それとの付き合い方をどうしていくのか? という問いがメンタルを安定させるためには大事なことだったと想像することができます。

「朝になるのを待つ?」それとも「友達になる?」と考えて、闇に向かって歩きはじめたはずなのです。

そんな縄文時代からつづく「最もフィジカルで 最もプリミティブで そして最もフェティッシュ」(Netflix「地面師たち」第6話より)な散歩のやり方が「闇を歩く」だと言えると思うのです。

ナイトハイカーは現代でもなお日常生活で忌避しがちな「闇」や「不安」に焦点を当て、夜の山へと歩きだすことで闇へのアプローチを試みたのですが…。

はたして、闇に飲まれず元の世界に戻ってくることができるのでしょうか!?

ナイトハイカーが山を行く姿は闇をただ恐れて忌避する姿勢ではなく、闇に飛び込み同化しながら友達になろうともがく古代人の姿にも重なるように思います。

このあたりで取ってつけておきますが野山を歩くことは健康やダイエットにもつながることだと思いますので、歩きはじめる動機のひとつとして「闇を歩く」をおすすめします!

さて「やみくも」(闇雲)にキーボードを打ってコラムを書き進めてきましたが、このあたりで賢明なケアラ読者さまから「胎内めぐり」を思い出したよ!という声が聞こえてきたような気がしました。


京都・清水寺の胎内めぐりは、ご本尊の下にある光が全く入らない空間を大随求菩薩のお腹の中(胎内)と考えてその暗闇の中に入って歩き、外に出ると生まれ変わることができると言われています。

▲胎内めぐり受付(小学生から)100円。「【京都市】東山区 パワースポット!暗黒の「胎内めぐり」から生まれ変わり体験♪」のコラムから写真をお借りしています。

「闇を歩く」という闇体験もまた、日常に潜む闇を単なる不安要素と捉えるのではなく、それを受け入れ闇のなかで「自分自身」「自分の気持ち」を見つめて戻ってくることの重要性を教えてくれているように思うのです。

「こっちへおいで...」闇の奥からいざなうナイトハイカー=中野氏のデスボイスならぬダークボイスに耳を傾けて、「闇を歩く」をはじめてみてはいかがでしょう?

はたして現代に生きる私たちは闇に飲み込まれず、元いた場所に戻ってくることができるのでしょうか?それは闇を歩いてみなければ分からないことなのかもしれません。

最後になりますが、夜の山を歩くときは闇に足を取られませんよう、足元に充分お気をつけてください。

まずは夜の街をぶらっと散歩していくことから慣れていくとよいと思います。

闇と友達になって遊ぶことに夢中になり、里に戻ったら100年以上が経過していて焦りました、というケースもまれにあるようです。
どうにか上手いこと闇と付き合いご無事のご生還となりますようお祈り申し上げます。

P.S. 以前に高尾山(東京・八王子)にいった時に、思ったより早く暗くなり「闇を歩く」状態になっちゃってすこし怖い体験もしましたけど楽しかったです。めでたしめでたし。

▲まっくら闇で出会うもの。それはあなた自身かもしれません…。きゃー!


●「おかししかお」これからの記事予定
06 >>> (未定)
05 >>> (予定)元気になりたきゃ、お尻をしめなさい
04 >>> 「暗闇」を歩いてダイエット!?
03 >>> 休養学: あなたを疲れから救う
02 >>> 唐揚げにはマヨがいいっ!?
01 >>> 「空腹」こそ最強のクスリ

<今回ご紹介した本>
闇を歩く (知恵の森文庫)

出版社:光文社 (2006/6/6)
発売日:2006/6/6
言語:日本語
文庫:302ページ

著者:中野 純
1961年東京生まれ。体験を作り体験を書く「体験作家」。「金比羅山ムーンライズ・ウォーク」「本所七つ闇」などのイベントを企画・案内し、暗闇関連の本を多数執筆する「闇歩きガイド」。私設図書館「少女まんが館」の共同館主でもあり、自宅開放運動を推進中。奪衣婆をこよなく愛し、2010年以降、奪衣婆写真展を3回開いている。

単著:
日本人の鳴き声』(NTT出版、1993年5月)
『ヒトの鳴き声ーホーミーと牛とマッキントッシュ』(NTT出版、1998年5月)
闇を歩く』(アスペクト、2001年7月)
月で遊ぶ』(アスペクト、2004年10月)
闇を歩く』(光文社「知恵の森文庫」 2006年6月)
図解「月夜」の楽しみかた24』(講談社「講談社+α文庫」、2008年7月)
東京「夜」散歩ー奇所、名所、懐所の「暗闇伝説」』(講談社、2008年11月)
東京洞窟厳選100 穴があったら入りたい!「地底の別世界」』(講談社、2009年12月)
庶民に愛された地獄信仰の謎 小野小町は奪衣婆になったのか』(講談社、2010年10月)
闇と暮らす。:夜を知り、闇と親しむ』(誠文堂新光社、2012年7月)
「闇学」入門』(集英社新書、2014年1月)

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