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サプリメントを飲んでも健康になれないことも!?その理由は?

ビタミン、ミネラル、乳酸菌、酵素…。いまやドラッグストアには、健康をサポートするという名のサプリメントがずらりと並び、私たちに「足りない栄養、補いましょう!」と呼びかけてきます。

けれど実は、サプリを一生懸命飲めば飲むほど、かえって健康を損なっている人が増えているのです。

いったいなぜなのでしょうか?厚生労働省の調査(※1)では、日本人の4人に1人が何らかのサプリメントを利用していると言われています。

ところが、頑張って飲んでいる人ほど、なぜか健康を損ねてしまうケースがあるのです。そんな矛盾が起こる可能性もあります。

足りない栄養=サプリで補う」は本当に正解?

現代人は忙しく、食事も簡素になりがち。「足りない栄養素をサプリで補えば安心」という考えは、一見理にかなっているように思えます。

しかしここに落とし穴があります。サプリメントは“単一の栄養素”を高濃度で抽出・加工したものです。本来、私たちの体は「食べもの」に含まれる自然な栄養素を、ほかの成分と一緒に摂ることでうまく吸収・活用するようにできています。

たとえば、ほうれん草から鉄分を摂るとき、ビタミンCや酵素などが助けになって体内への吸収がスムーズになります。でも、鉄のサプリを単独で飲んだ場合、過剰になってしまったり、他の栄養素とのバランスを崩してしまうことも。

つまり、「足りないから足せばいい」という発想では、かえって体のバランスを乱す可能性があるのです。
サプリメントは単一成分が高濃度で含まれる反面、食品にある“栄養の相乗効果”がないことが多いのです。たとえば、鉄の吸収にはビタミンCが必要ですが、鉄サプリ単体で摂ると吸収率が低くなります(※2)。

また、ビタミンB群やミネラルも、体内で互いに影響し合って働いており、一部だけを高濃度で摂るとバランスが崩れやすいことが知られています(※3)。

大事なのは“自然のバランス”を取り戻すこと

まずは食事・運動・睡眠・ストレスケアといった基本の生活習慣を整えること。自然に近い暮らしこそが、体が本来持っている回復力を引き出す、いちばんの健康法です。

■“自然治癒力”を弱めてしまう
私たちの体には、本来自分でホルモンを作り、ビタミンを合成し、腸内環境を保つ能力があります。ところが、サプリに頼りきることで「体の働き」が鈍るという研究もあります。例として、腸内フローラの研究(※4)では、「プロバイオティクスを外から摂取し続けると、腸内で自然にバランスを保つ力が低下する」ことが示唆されています。

■サプリに含まれる添加物や重金属のリスク
意外と見落とされがちなのが、サプリメントに含まれる添加物や重金属の蓄積リスクです。多くのサプリには、賦形剤(セルロース、ステアリン酸マグネシウムなど)、着色料、香料が含まれており、長期的な摂取が肝臓や腎臓の負担になる可能性があります(※5)。また、2023年の厚労省の調査では、一部の輸入サプリから許容以上の鉛やカドミウムが検出されたケースも報告されています(※6)。

■科学的エビデンスでも「効果がない」ことがある
アメリカのハーバード公衆衛生大学院の調査(※7)では、「一般的な成人におけるマルチビタミンサプリメントの長期摂取は、死亡率や重大な病気の予防に明確な効果は確認されなかった」とされています。また、ビタミンEやβカロテンのサプリが、かえって一部の人で発がんリスクを高める可能性があることも報告されています(※8)。

本当に健康を取り戻したいなら、まず見直すべきは「食事・睡眠・運動・ストレス管理」といった基本的な生活習慣です。旬の野菜、自然な調味料、丁寧に作ったごはん。こうした食生活は、単なる栄養補給だけでなく、心と体のリズムを整える働きを持っています。

また、太陽の光を浴びる、よく笑う、自然の中を歩く…。これらは一見地味ですが、体の回復力や免疫力を高める「自然治癒力」を育む大切な習慣です。

まとめ

サプリメントそのものを否定しませんが、食事だけではどうしても補いきれない栄養を一時的にサポートする役割もありますし、医師の指導のもとでの補助的なサプリ利用には意味があります。

しかし、一般の人が「なんとなく体にいいから」と多種類を飲み続けるのは逆効果になりかねません。

「これを飲めば安心」と思考停止してしまっては本末転倒。がんばって飲んでいるのに健康になれないと感じる人は、一度立ち止まって、生活全体を見直してみてください。

本当に必要なのは、“自然に備わった自分の力”を信じて、育てていくことかもしれません。

【参考文献】
※1:厚生労働省「国民健康・栄養調査(2021)」
※2:日本食品標準成分表/鉄の吸収とビタミンCの関係(農研機構)
※3:医学書院『標準栄養学』第13版
※4:Israel A. et al.(2018)“Personalized Gut Mucosal Colonization Resistance to Probiotics”, Cell
※5:国立健康・栄養研究所「健康食品の安全性・有効性情報」
※6:厚生労働省「輸入健康食品に関する注意喚起」(2023)
※7:The Physicians’ Health Study II(Harvard, 2012)
※8:The Alpha-Tocopherol Beta Carotene Cancer Prevention Study Group(NEJM, 1994)

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